目次

  1. はじめに
    • 紅茶の誕生と世界への普及
    • 紅茶文化の広がり
    • 飲み方・バリエーションの進化
    • 健康面での研究
    • 本書の目的
  2. 第1章 紅茶産地――茶園とその特徴
  3. 第2章 紅茶の商品学
    • 紅茶の製法
    • 鑑定とテイスティング
    • 紅茶のグレード
    • 紅茶と水色
  4. 第3章 紅茶のおいしさを引き出す
    • 紅茶の淹れ方
  5. 第4章 ティーバリエーション
  6. 第5章 オリジナルのブレンドティーを作る
  7. 第6章 紅茶と食べ物の相性
  8. 第7章 紅茶の歴史と文化の解明
  9. あとがき――紅茶が持つ未来性を考える
    1. 茶摘みから未来を思う
    2. 紅茶成分の研究と発展
    3. 紅茶のおいしさの発展
    4. 紅茶飲料の未来像
  10. 参考文献

要約

本書は、紅茶の産地や製法、商品知識、淹れ方、ブレンド、食との相性、歴史や文化、健康への作用までを幅広く扱い、初心者にも紅茶の全体像がわかるように解説する本である。

紅茶は中国・福建省で誕生してから約400年を経て、世界120カ国以上に広まり、水に次いで親しまれる飲料となった。特に英国では、アフタヌーンティーだけでなく朝食から夕食まで生活の中に定着してきた。一方、現代ではブラックティーやミルクティーだけでなく、アイスティー、フルーツ、ハーブ、スパイス、酒類を組み合わせたバリエーションティーへと用途が拡大している。

著者は、紅茶のおいしさは単に茶葉そのものの味や香りだけでは決まらないと考える。紅茶の歴史や文化を知ること、人と一緒に飲むこと、食事や場面と組み合わせて楽しむことも含めて、紅茶のおいしさが成立する。紅茶はそれ自体で完成された飲み物であると同時に、さまざまな材料や食事と組み合わせられる「素材」でもある。

茶摘みと紅茶の未来

著者は約40年前、スリランカの茶園で、大勢の人々が急斜面に入り手作業で茶摘みをしている光景を見た。当初は、日本のような機械摘みを導入した方が合理的だと考えた。

しかし後に、手摘みには重要な意味があることを知る。

  • 山岳地帯では機械を導入しにくい
  • 茶園で働く人々の雇用を維持できる
  • 必要な新芽だけを選択して摘むことができる
  • 茶木への負担が少ない
  • 良質な茶葉を継続的に得やすい
  • 人が茶園に入り直接触れる農業であることが、安全性にもつながる

効率や合理化だけを追求する機械化に対して、人の手で作物を扱うこと自体が、将来的には価値になる可能性があると著者は考える。紅茶の製造設備が高度化しても、最初の工程である茶摘みが人の手によって続いていることに、紅茶という飲料の特徴がある。

紅茶成分の研究と発展

茶は古くから「東洋の神秘薬」とされ、ヨーロッパに伝わった当初も、飲料というより健康に役立つものとして紹介されていた。

17世紀のイギリスでは、茶には頭痛や胃腸不良など多くの症状に効果があると宣伝されていた。当時は科学的な根拠に基づくものではなかったが、現代では茶の成分について研究が進んでいる。

中心となるのがカテキン類で、

  • EGCG(エピガロカテキンガレート)
  • EGC
  • EC
  • ECG

などが知られている。

また紅茶では、発酵によって生まれるテアフラビンなどの紅茶ポリフェノールも研究されている。こうした成分には抗酸化作用などがあり、健康との関係について世界各地で研究が続けられている。

著者は、昔から茶殻を家畜などに与えると元気になるといった生活上の経験が伝えられてきたことにも触れ、長年の経験知と現代科学の研究が結びつきつつあると見る。

紅茶のおいしさの発展

かつて紅茶は高価な飲み物として王侯貴族が楽しみ、その後裕福な層から庶民へと広がった。家族で温かい紅茶を囲むことは、団欒や幸福の象徴でもあった。

しかし紅茶の飲み方は時代とともに変化している。

ティーバッグの登場によってティーポットなしでも飲めるようになり、アイスティーやペットボトル紅茶によって、場所や時間を選ばず一人でも紅茶を楽しめるようになった。

さらに現代では、

  • フルーツ
  • ハーブ
  • スパイス
  • ミルク
  • 酒類
  • 他の茶類

などと組み合わせることで、紅茶の用途は大きく広がっている。

著者は、紅茶そのものの味・香り・水色を味わうことを基本としながらも、紅茶をあくまで一つの「材料」と考えることが、新しい商品や飲み方を生み出す鍵だとする。

紅茶が登場する場面も、アフタヌーンティーだけでなく、朝食、昼食、夕食、スポーツ、アウトドア、パーティーなどへ広げることができる。紅茶の役割を増やすことが、そのまま紅茶文化の発展につながる。

紅茶飲料の未来像

日本ではペットボトル紅茶という独自の大きな市場が形成された。その代表例として著者は「午後の紅茶」を挙げている。

当初はストレート、レモン、ミルクといった甘味のある商品が中心だったが、その後、無糖紅茶が登場した。無糖紅茶は水に近い感覚で飲め、食事を選ばず、個性が強すぎないため幅広い人に受け入れられる。

著者は、未来の飲料は次第に「ライト志向」になると予測する。

肉体労働が中心だった時代には、濃い味や強い刺激が好まれた。一方、現代社会では身体的疲労よりも脳の疲労や精神的ストレスが増えており、人々は強烈な刺激よりも、軽く、爽やかで、優しい風味を求めるようになるという。

そのため未来の食品・飲料では、

  • 低脂肪
  • 低カロリー
  • 無糖・微糖
  • 高い機能性
  • 軽く穏やかな味

といった特徴が重要になる。

究極の飲料は水である。しかし水だけでは風味や機能性が乏しい。その水に最も近い存在として、健康機能と味わいを備えた茶飲料があり、その中心に紅茶が存在してほしいというのが、著者の示す紅茶の未来像である。

本書全体を貫く考え方は、紅茶を単なる一杯の飲み物としてではなく、歴史・文化・健康・食・人との関係を含めた総合的な存在として捉えることにある。