『コーヒーの科学――「おいしさ」はどこで生まれるのか』
目次
- はじめに
- 第1章 コーヒーってなんだろう
- 第2章 コーヒーの木とコーヒーの豆
- 第3章 コーヒーの歴史
- 第4章 コーヒーのおいしさ
- 第5章 おいしさを生み出すコーヒーの成分
- 第6章 焙煎の科学
- 第7章 コーヒーの抽出
- 第8章 コーヒーと健康
- 終わりに
- 参考文献
要約
本書は、コーヒーを「科学」という視点から多面的に理解しようとする本である。コーヒー豆そのものから、歴史、おいしさを構成する成分、焙煎、抽出、健康との関係までを扱い、「コーヒーとは何か」「なぜこの味や香りが生まれるのか」という疑問を掘り下げていく。
著者の本職は基礎医学・生命科学系の研究者であり、大学では遺伝子や微生物などを研究している。一方、大学時代に趣味としてコーヒーを淹れ始めたことをきっかけに、豆、抽出、焙煎へと関心を広げていった。大学院では周囲の人のコーヒーを淹れる役を引き受けるほどになり、自家焙煎にも取り組むようになった。
1996年には、自ら蓄積した知識を公開するためコーヒーに関するウェブサイトを開設し、ネット上の愛好家や専門家との情報交換も続けてきた。
科学者として「なぜそうなるのか」という原理を考える習慣と、薬用植物から成分を抽出して薬効を調べる研究経験から、特にコーヒーの香味成分に強い関心を抱くようになった。焙煎や抽出方法によって味や香りが大きく変わることから、
- コーヒーの香味は何によって生まれるのか
- 焙煎によって成分はどう変化するのか
- 抽出によって何がコーヒー液に移るのか
といった疑問を追究するようになる。
しかし、日本語で読めるコーヒー関連書籍には科学的な情報が十分ではなかったため、海外の専門書や学術論文にまで対象を広げ、分野を問わずコーヒー研究を調査した。専門外の領域については教科書から学び直しながら読み進め、収集した文献は千本を超えたという。
一方で、大企業の研究所などで得られた研究成果が、そのまま家庭でのコーヒーや小規模な自家焙煎店に当てはまるとは限らない。そのため著者は、科学研究と実際のコーヒーづくりとの間にあるギャップを、現場のコーヒー店などと協力しながら埋めることも課題としている。
本書は、著者自身がコーヒーに興味を持ち始めた頃に「こういう本を読みたかった」と思っていた内容を形にしたものである。長年集めてきた知識を凝縮し、コーヒー好きが抱くさまざまな「なぜ」に科学的に答えることを目的としている。
「終わりに」では、読者に改めて「あなたにとってコーヒーとは何ですか」と問いかける。著者がそれ以上に根本的な問いとして挙げるのが、
コーヒーとは何だろう。
という問題である。
この問いには単純な答えはない。植物、飲料、化学成分、味覚、文化、歴史、健康など、さまざまな角度からコーヒーを眺め、それぞれの知識を積み重ねていくことで、はじめてコーヒーの全体像を立体的に捉えられるようになる。
本書の目的は、一つの正解を示すことではなく、科学的な知識を通じて読者自身の「コーヒー観」をより多面的なものにすることにある。読者が本書を読む前とは少し違った形で「自分にとってコーヒーとは何か」を考えられるようになることが、著者の目指す到達点である。
本書の中心的な問い
「コーヒーとは何か」を、科学を含むさまざまな視点から眺めることで、コーヒーという存在をより立体的に理解する。