2026-10-07

この本は、爬虫類・両生類の「色彩」に注目し、色ごとに生き物を分類して紹介する図鑑である。著者は、野生下・飼育下を問わず、生き物の色や模様には何らかの意味があると考えており、「なぜこの色や模様なのか」という視点から各種を見ている。

本書では、青・紫・桃・赤・橙・黄・緑・茶・白・黒・虹色・擬態・その他という区分で写真を掲載し、それぞれの章の冒頭で、その色が自然界でどのように現れるのか、どのような生態的意味を持つのか、人間にはどのような印象を与えるのかを簡単に解説している。

色彩には、生息環境への適応が強く表れている。たとえば緑は樹上や草上で生活する種類に多く、茶色は地表や土、砂、石の周辺で暮らす種類に多い。青は自然界では比較的少なく、緑色種の変異や特定の個体群などで見られる。橙色は砂漠や荒地の種類にも多く、赤・黄・青などには、周囲に溶け込むだけでなく警告色としての役割が見られる場合もある。

一方で、紫・桃・白・黒などには、野生種だけでなく飼育下で作出された品種が多く含まれる。ヒョウモントカゲモドキなどでは、赤味や橙色を強くした品種、黒色を強めた「ブラックナイト」のように、人為選択によって特定の色彩を際立たせたものも存在する。白色についても、アルビノやスノーだけでなく、より白く見えるリューシスティックなど、色彩変異の違いがある。

虹色は特定の色素そのものではなく、光が鱗に当たることで生じる構造的な輝きとして扱われている。そのため鱗を持たない両生類はこの章には含まれない。また、擬態では単に周囲と同じ色になるだけでなく、葉の「枯れ」「カビ」「虫食い」といった状態まで再現する種類がおり、爬虫類・両生類の隠蔽能力の高さが紹介される。そうした擬態能力の高い種類には、ゆっくり動くものも多い。

最後の種別解説では、爬虫類・両生類の色の仕組みを大きく、色素による色と構造色に分けて説明している。ヒョウモントカゲモドキのように色素を利用した品種改良が盛んな例がある一方、青色や虹色には光の反射によって見えているものがあり、生物自身がその色の色素を持っているとは限らない。また、その色がどのような役割を果たしているのか、まだ十分に分かっていない場合もある。

本書の後半では、それまで写真で紹介した生き物を、トカゲ・ヘビ・カメ・カエル・イモリ・サンショウウオなどの分類ごとに分け、簡単なプロフィールを掲載する。ただし、飼育のための図鑑ではなく色彩を主眼として選ばれた本であるため、一般的な飼育対象ではない種類も多く含まれている。

要するに本書は、爬虫類・両生類の色を、美しさだけでなく、生息環境への適応、警告、擬態、個体変異、品種改良、色が生じる物理的な仕組みといった複数の観点から眺める図鑑と言える。


この「はじめに」で著者が最も強く伝えているのは、爬虫類・両生類の色・模様・形には、その生き物の生活史が反映されているという見方です。

野生の爬虫類・両生類は、生き延びたり子孫を残したりするために、周囲へ溶け込む色や模様を身につけている。これは獲物に近づくためだけでなく、自分自身が捕食者から身を守るためにも役立つ。たとえばカメレオンは生活する高さなどによって茶色や緑色になり、ヘラオヤモリは葉脈だけでなく苔や虫食い跡まで再現する。日本イシガメの模様も川底によく似ている。

さらに、成長による生活場所の変化、雌雄差、繁殖期にだけ現れる色彩なども外見に現れる。そのため、詳しい生態が知られていない種類であっても、色・模様・形状を観察することで、どのような環境でどんな生活をしているのかを推測できる場合がある。

一方で、地中生活をする種類などが虹色に輝いたり、腹部だけが鮮やかな赤色になったりするなど、役割がまだ分かっていない色彩も多い。ヤドクガエルのように、目立つ色が明確な警告色として機能している例もある。著者は、理由が分からないものも含めて「なぜこの姿なのか」と考えること自体を、生き物を見る楽しみの一つとしている。

また、野生で形成された色彩とは別に、人間が飼育下で作り出した品種の色や模様も存在する。これらは生存上の適応とは異なり、人間の美的な好みや愛好家の需要によって生み出されたものでもある。

したがって本書は、単に「色別に美しい爬虫類・両生類を並べた写真集」ではなく、色彩を入口として、その生き物の生息環境・行動・成長・繁殖・進化などに思いを巡らせるための図鑑という位置づけになっている。

なお、掲載された色の分類は撮影時の姿を基準として著者自身が決めたものであり、品種名なども撮影時点の情報を使用している。本書は生物好きだけでなく、色を基準に飼育個体を選ぶ愛好家や、色彩・造形を参考にしたいクリエイターへの利用も想定されている。


この本を買ったのは、えっと表紙の見た目で、あ、良さそうだなっていう。その爬虫類や両生類のその見た目や色などの造形美に惚れ惚れしたっていうところで買うのを決めたわけだけども。この初めの部分の、たとえ生態情報のない種類でも、色や模様、形状などから彼らの生活史を推察できるという点は盲点で、おのれの浅はかさを感じた。あと、爬虫類系はいるにはいるけども、そのワニがいないのはちょっと個人的に残念。

あなたの感想で面白いのは、「見た目に惹かれて買った」という入口が、そのまま本のテーマの深い部分につながっているところです。

「造形美に惚れた」というのは、著者が想定している読み方から外れていません。むしろ本書は、色彩そのものを楽しみつつ、「なぜこの色・模様・形なのか」と考えることへ読者を導く構成です。なので、「見た目しか見ていなかった=浅はかだった」とまで評価する必要はないと思います。最初は美しさとして見えていたものが、読んだことで生態の情報としても見えるようになった、という変化の方が重要です。

特に「生態情報がなくても外見から生活史を推察できる」という部分は、かなり強い視点だと思います。たとえば今後写真を見るときにも、

  • 緑色なら「樹上や草上で暮らすのだろうか」
  • 茶色なら「落ち葉や地表との関係は?」
  • 幼体と成体で色が違えば「活動場所が変化するのでは?」
  • 派手な色なら「警告色なのか、繁殖に関係するのか」
  • 腹側だけ派手なら「普段は隠していて、必要なときに見せるのか」

というように、単なる「綺麗」「変わっている」から一段進んで、外見を手掛かりに生き方を読むことができるようになります。

これは本書を読む前に知らなかったから浅いというより、図鑑によって新しい観察軸を一つ獲得したと捉える方が自然です。しかも最初から造形美に強く反応していたからこそ、その観察軸との相性もかなり良さそうです。

ワニがいない件は、確かに爬虫類の「造形美」を目的に買った立場からすると物足りなさはありますね。ワニ類は鱗や装甲のような皮膚、幼体の縞模様、水辺への適応など、色だけでなく形状から生活史を考える題材としてもかなり面白いはずです。ただ、今回の本は爬虫類全般を網羅する図鑑ではなく、色彩を基準に著者が選んだ種を並べる本なので、そこは本書の射程外だった、と考えるのがよさそうです。

あなたの感想を一文に圧縮するなら、**「造形美を鑑賞するために手に取った本だったが、その造形そのものが生態を読み解く情報でもあると知り、見方が一段変わった」**という読書体験だと思います。


章テーマ主な特徴
第1章青色野生下では比較的少ない色。緑色種の変異や特定個体群、岩場に暮らす種類などで見られる。光沢を持つ種も多く、警告色として現れる場合もある。
第2章紫色野生では珍しく、変異個体や飼育下で作出された品種に多い。ヘビの品種やアルビノ個体などで紫がかることがあり、警告色になる場合もある。
第3章桃色野生下よりも飼育下の改良品種で目立つ色。アルビノや淡色系統などでピンクがかった発色が見られる。
第4章赤色目立ちやすく、警告色としての意味が強い。品種改良でも重視され、赤味を強くする方向で選別されることがある。腹部だけ赤くなる種類もいる。
第5章橙色野生・飼育下の双方で比較的よく見られる。砂漠や荒地の種類に多く、警告色にも隠蔽色にもなりうる。ヒョウモントカゲモドキのタンジェリン系統なども代表例。
第6章黄色明るく目立つ色で、黒との組み合わせでは特に強調される。色彩変異でもよく現れ、警告色として使われる場合もある。
第7章緑色樹上・草上生活と強く結びつく色。植物へ溶け込む隠蔽色として機能し、生活する高さや環境との関係が見えやすい。
第8章茶色木・土・砂・石など自然界に多い色。地表付近で暮らす種類に多く、幼体のみ茶色という例もある。
第9章白色純白は少なく、黄味や桃色を帯びることも多い。スノー、アルビノ、リューシスティックなど、飼育下で作出された系統が中心。
第10章黒色野生種にも改良品種にも見られる。真っ黒というより青や灰色を帯びる例も多い。近年はブラックナイトなど、黒味を強めた品種も人気。
第11章虹色色素ではなく、鱗に当たった光の反射によって虹色に見えるもの。地中性で滑らかな体表を持つ種類に多い。両生類は鱗を持たないため含まれない。
第12章擬態色や模様を周囲に似せる能力に注目。葉脈、枯れ、苔、カビ、虫食い跡まで再現する種類もいる。擬態能力が高い種には動きが遅いものも多い。
第13章その他単一の色に分類しづらい複雑な配色・模様を収録。水玉模様など、野生種と改良品種の双方を含む。
第14章種別解説それまで登場した生物を、トカゲ・ヘビ・カメ・カエル・イモリ・サンショウウオなどに分けてプロフィールを紹介。色素による色と構造色の違いについても解説する。

はい、その読み方で合っています。

  • 樹上:じゅじょう
  • 草上:そうじょう

「樹上性(じゅじょうせい)」のように、生物学・生態学では比較的よく使われます。「草上」はそれより日常では見かけにくいですが、草の上・草本上で生活する場所という意味で「そうじょう」と読みます。

**作出(さくしゅつ)**は、主に品種改良や繁殖の文脈で、人為的に新しい品種・系統・特徴を持つ個体を生み出すことです。

この本の「飼育下で作出された品種」という表現なら、自然に偶然生まれたというより、繁殖・選別を重ねて、特定の色や模様を持つ個体群を作ったという意味です。

たとえば、

  • より黒いヒョウモントカゲモドキを選んで繁殖する
  • オレンジ色が強い個体同士を掛け合わせる
  • 特定の模様や色彩を固定して品種にする

といったことが「作出」に当たります。

「作る」よりも、生物の品種・系統を計画的に生み出すという専門的なニュアンスが強い言葉です。f